あなたには分からないあなたの得意な仕事

 

自分が好きな仕事、自分が得意な仕事、自分が苦手な仕事、自分がやりたくない仕事、皆さんはこれらのどれかの仕事を毎日こなしています。一番理想なのはどれですか?僕は自分が好きな仕事、かつ自分が得意な仕事をしているときだと思います。

僕がマイクロソフトで仕事をしている時、当時ディレクターだったM岩さんから言われた言葉で今でも自分の指針となっていることがあります。

「君が得意なことは、君ではなく他人が知っている」

だいぶ昔の話なのでシチュエーションは覚えていませんが、多分飲み会のときだったと思います。まだ起業を夢見ていた僕が若気の至り全開で「僕が得意な仕事じゃなくて、僕が苦手な仕事ばかりアサインされ(割り当てられ)ます」のようなことを言ったときです。M岩さんはニコニコと、

「きっとそれが君が得意な仕事なんだよ」

と言いました。自分で自分が得意なことなんてわからない。何故か分からないけど、この仕事ばかり頼まれる、ということはそれが「僕が周りの中で一番得意な仕事」だということです。自分がどう思うかは全く関係ないのです。

職場のメンバーは皆自分の仕事を最も効率よく進めようとしています。そのときに、あるタスクを他の誰かに依頼したいと思ったときに真っ先に思いつく同僚、後輩、先輩にお願いしようと思うのは当たり前の話ですね。皆さんもそうでしょう?この仕事はあいつに頼めば安心だ、という人が職場にいませんか?逆に仕事を依頼される立場に立ってみると、自分がたとえ得意ではないと思っている仕事が自分に次々に依頼されたとしたら、それは自分でも気づかない「自分の得意な仕事」なんです。

自分では得意というか当たり前に出来すぎるために自分の中での評価が極端に低くなっているのかもしれません。または「他の人は自分よりもっとうまく出来るはずだ」という自分の中での勝手な先入観があるのかもしれません。でもそれらは全く役に立ちません。他人しかあなたのことを評価できません。

人から頼まれれる仕事、頼られる仕事、それがあなたの得意な仕事なんです。

M岩さんからそのことを聞いた時、ハッとしたことを覚えています。新人でも「ペーペー」でも、暇な人と忙しい人がいますよね。忙しい人はそれだけ仕事の依頼が多い人、つまりこの人にお願いしたい、と思われている人なんです。それが組織の役に立つということです。僕は新人で就職したメーカーでの工場研修で、自分よりわずか数年先輩の人が朝から晩まで呼び出されてはミーティングに仕事に駆けずり回っているのを見て、周りの先輩に聞いたことがあります。「あの人忙しすぎませんか?他の人は手が空いているのに、何で忙しい彼ばかりに仕事を頼むんでしょうね」と。すると一人の先輩がこう言いました「出来るやつに頼みたくなるのは当たり前だろ?」と。

得意なことは自分では分かりません。もし「何でこんな(つまらない)仕事ばかり自分にまわって来るんだろう」と悩んでいる人がいたら、それはあなたが誰よりもその仕事が上手にできるからです。

一方「自分好きな仕事」は自分にしか分かりません。もちろん好きな仕事と得意な仕事が一致しているに越したことはありませんが、なかなかそうはならないものです。特に新人の間は。

自分がやりたくない仕事ばかり依頼されて悩んでいる人は、まず上記のことを考えてみて、さらに機会があれば思い切って周りの人に率直に尋ねてみてはいかがでしょうか。「何で自分にはこの仕事ばかり来るのだろう」と。

答えは自明です。