レポート: 未来スケープ発足の背景(1) 〜 イントロ

このレポートについて

この記事では私がこれまでの経験と観察を通じて気付いた現在の日本の画一的な人生設計とその原因と思われる一義的な幸福像に対する疑問点を、先行研究やサーベイのデータを元に考察します。次に、提起された問題の改善策として2016年に発足した「未来スケープ」の活動について、その意義と仕様を説明します。後半は実際的に当活動の準備期間から稼働に至るするまでに実施したこと、活動を通してわかったこと、最後に今後のプランと課題を示します。

はじめに

日本人の人生はとても画一的です。一部の人達を除いて、多くの人々は自分が送る人生や手に入れるべき「幸せ」に対して概ね同様の、かつ漠然としたイメージを持っているのではないでしょうか。例えば下記のようなことです。

  • 良い学校に行く
  • 良い会社に就職する
  • 一生その会社で働き、定年を迎える
  • 定年後、人生の終了まで生きていくお金を確保する
  • その間に結婚し、子どもや孫を持ち、不幸にならない人生を送る

これらは決して悪いことではなく、むしろ比較的安定的で幸せな人生と言えます。ある意味では時間をかけて最適化された人生と言えるかも知れません。たとえば受験勉強は入試突破の手段ではあると同時に、いかに知識を効率よく自己管理しながら身につけるというプロセスでもあります。また就職した会社での仕事を通して人間関係や価値の創造を学び、実践していくことができます。この「人生のレール」は多くの検証がなされていた結果であり、その上を進んでいる限り安全そうに見えます。この人生モデルの共通認識を「一義的な幸福像」と呼ぶことにします。

さて、この一義的な幸福像が時間をかけて、世代を超えて、深く広く浸透した今日の日本では、その反動として人生に他の選択肢があることを知る機会が極端に少なくなっているのではないかと考えています。レールに馴染めなかったり、会社の倒産や不景気によるレイオフなどの外的要因でレールから外れた場合、それ以外の道を歩む想定をしていなければ、突然迷子になるかも知れません。理不尽に辛い状況下に置かれてしまった場合でもレールから離れることを恐れて、無理な我慢を自分に強いてしまうこともありえるでしょう。あるいはレールに沿って過ごした人生の後になってから他の道があったことに気づくケースも想定できます。

人間の適性、能力、幸福観、優先事項は人によって違います。特に環境や価値創造の方法が多様化している現代においては、なおさらです。それにも関わらず、世間一般的に一義的に定義された幸福にとらわれることで、むしろ自分の幸福から遠ざかってしまう可能性すらあります。そもそも幸せになるための万人に共通する生き方などはありません。自分にとっての幸せや人生を自分自身で定義し、そのためにどのような選択を行っていくべきなのかを一人一人が考えて、周りとの協調関係の中で生きていく時代になってきているのです。できれば人生の早い段階から、そして人生の終わりまで、継続的にそのことを考え続けていくことが大事です。一生安泰という幻想から少し距離を置き、物事を現実的に考えれば良いだけです。

事実、このような一義的な幸福像を信奉している日本の自殺率は増え続け(10万人あたりの自殺者数は米国の2倍)、うつ病患者の数も増加の一途を辿っています。そして幸福度指数は世界平均を下回っています。それでも何故日本人は一義的な幸福像を信じることをやめないのでしょうか?(*ソースはこちらを参照)

その原因を考えることから未来スケープの活動はスタートしました。下記の仮説をベースとしています。

  • 安定=お金のみを幸福の基準としている
  • 自分の生き方を考えるために必要な情報がない
  • 自分の生き方や幸福観を考えるきっかけがない
多くの日本人にとって、人生をシミュレーションするタイミングは就職活動を行うわずか1年間程度です。そして一度就職してしまうと、再び考えることを辞めてしまいます(緑)。本来は人生の早い段階でシミュレーションを開始し、そして一生をかけて自分の幸せとは一体何なのかを追求し、そして自分として社会に最も貢献できることは何なのかを考えるべきなのではないでしょうか(青)。

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