レポート: 未来スケープ発足の背景(2) 〜 人生の地図を作る

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人生の地図を作る

日本では進学や就職に関する情報が非常に豊富に提供されていることとは対照的に、個別の人間がどのように生きるかという情報は限定されています。就職するまで多くの人は人生を深く考える必要がなくレールの上を進んでいきます。この国では、受験から就職活動に至るまでの情報が万人に平等に与えられます。非常に恵まれた環境です。問題はその後です。

私自身「一義的な幸福」を漠然と目指して大学に進学し、日本の大企業に就職しました。そしてその時になって初めて「これでよかったのだろうか?」と考えるようになりました。人生には何事も遅すぎるということはありませんが、その時は自分がどう生きたいか、自分が描く自分の幸せとはどういうものか、と何故もっと早い段階で考えなかったのだろうかと思いました。それまでの自分は「こうしておけば安泰だ」という流れに身を任せて来て、レールの外側の世界を考えることは一切しませんでした。レールが選択肢の1つだとすら思いもしなかった、という方が適切な表現かもしれません。就職後に初めて、どのような情報、きっかけがあったらもっと早い段階で、自分の人生に対して真剣に考えることができたのかを考えるようになりました。多種多様な人間がいるのに対して幸福観が一義的でしかないという現実は明らかにミスマッチを起こしています。それは一人一人の幸福に直結する問題であるだけではなく、国際社会の中での日本の未来を左右する問題でもあります。なぜなら各個人が自分の能力を最大限に発揮していく事が国全体としての成長につがりますし、個人の能力が最大限に発揮される環境は人によって異なっているからです。日本の若い人たちが人生の早い段階でこのミスマッチに気づき、自分の人生に対して前のめりで取り組むことができれば、自分自身の幸せと自分が社会に貢献できる価値創造を意識することができると考えています。そして他者の人生観を自分のもののように尊重して、協調していくことがとても大切です。当時の私は大学卒業というレールの終点駅を降りたものの、地図を手にすること無く立ちすくんでいたような気がしました。

未来スケープではこの問題に取り組むために「人生の地図を作る」ことを提案します。地図を持たずに旅に出るのは無謀です。そもそも向かって行きたい場所も地図がなければ知ることも出来ませんし、道順を考えることもできません。自分自身を振り返ってみると、当時の私の道しるべとなったのは、できるだけ多くの人たちの声を聞き、その人たちが何故その仕事をしているのか、各々にとってその生き方はどういう意味があるのかを尋ね回ったことでした。結果として自分自身の人生の優先順位や価値観を社会人として再認識することができ、次の進路と方向性を決めるのに大変役立ちました。未来スケープ発足のきっかけは、このような私自身のこの経験に基づき、現役の社会人へのインタビューを実施公開することです。それにより、日本の若い人たちが「就職までの一本道の先に暗闇が広がっている」という現状から脱却し、「手にした人生の地図を元に、自分でどの方向へ向かっていくのかを俯瞰して考えられる」状態へと変わっていくためのサポートになることを期待しています。

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