レポート: 未来スケープ発足の背景(5) 〜 今後どうなるのか

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今後どうなっていくのか?

それでは今後もこのまま世界でもまれな新卒一括ポテンシャル採用と終身雇用という状況が続いていくのでしょうか?残念ながらその可能性は低いと言わざるを得ません。ここでは多様性という観点から企業の立場で2つの仮説を示します。

  1. 企業の競争は日本国内だけではなく世界レベルに及んでいる
  2. 価値が目まぐるしく変わる時代になり、時流やニーズに合わせた技術活用とその変化に適応する力が企業の成功、成長要因となっている

まず1つ目の企業の競争が世界レベルになっていることは、今後採用される社員の競争力と密接に結びついています。「企業は人」と言われるように社員の質がその企業の強みとなり、経営の根幹となることは周知の事実です。では新入社員として入社してくる社員を日本と海外で比べた場合、どちらが即戦力として機能するでしょうか。

ポテンシャル採用という言葉通り、日本の企業の新入社員はポテンシャル(潜在能力)として採用されています。一方で中途採用とほぼ同じ採用基準を満たす必要がある海外の新卒学生は、皆各々目的意識を持ち(会社名だけではなく専門職としてのプロフェッショナル意識を持ち)応募してくるわけです。海外の企業との競争を強いられている日本企業が今後どのような人材獲得を模索していくべきかを考えるとポテンシャル採用に分が悪いことは自明です。

一方でポテンシャル採用の企業側のメリットもあります。社員が退職しないという前提に立つことで長期的なプランを練ることができ、そして前述した通り社員教育にもコストを掛けられることです。チームワークという面からも「自分の同僚が辞めることはない」という前提に立つことで、長期的な利害をベースとした信頼関係を築くことが出来ます(一方で長期的に続く関係性を意識するがゆえに本音で議論できない=会社の目標とは違う個人的な思惑や政治が影響してしまう欠点もあります)。

ところが2つ目の理由「価値が変化し、適応力が企業の成長要因になっている」という視点で考えてみると、そのポテンシャル採用のメリットも揺らいできます。そもそも長期的なプランは今後も機能するのでしょうか。人々の価値やニーズが変化し、そして活用すべき新技術も次々と生まれ日々進化している現状下で、企業は戦略を固定して時間をかけて実施していくよりも、仮説に基づいて動き出し、その都度修正していく姿勢の方が成功確率を高める要因となってきます。

インターネットを代表とするIT産業が普及してきた現在では、突如として現れた新しい技術がそれまで何十年も続いていた産業構造を一変させるという事例を我々は近年いくつも目の当たりにしています。特定の新技術に詳しい技術者が今すぐ欲しい、その技術を理解し製品に落とし込める製品担当が欲しい、それを分り易く顧客に説明できるマーケティング担当者、営業担当者が欲しい、といった議論はすでに今日の企業内でも盛んに行われているでしょう。そのスピード感や適応力を企業が確保しようとした場合、専門知識や経験を持つ社員をタイムリーに採用したいと思うようになるのは自然なことです。終身雇用を前提に入社してきた社員の多くは、文字通り「就職は終身」と考えていますから、入社するまでが勝負であって入社後に自ら進んで何か新しいことに挑戦し、スキルを獲得し、経営に提案していくという意識は、企業名ではなくプロとして生きていく覚悟を持っている人達に比べると平均的には薄いと考えられます。

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