自分の人材市場での価値を考える

皆さんは自分の市場価値(市場価格)を意識したことがありますか?

そもそも市場価値とは何なのかピンとこない人も多いかもしれません。僕は新卒で就職した企業の新人研修でその話を聞いてからずっと心に残っています。


確か入社式の日だったと思います。社長の挨拶の後、当時の人事部長のTさんという方が新入社員に向けてメッセージを送ってくれました。

「自分のマーケットプライスを意識して下さい」

最初はピンときませんでした。Tさんは「新入社員にこんなことを言ったら怒られちゃうかもしれないな」と笑いながら前置きをした上でお話してくれました。

「本日皆さんはめでたく当社に入社されましたが、もし仮に皆さんが急に人材市場に放り出されたときに、誰が(どの企業が)いくらで買ってくれるのか(就職できるのか)を意識して仕事をしてください」

まさに「じわじわくる」という感じで、その時から今に至るまで僕の基礎となっています。時間をかけて自分なりに考えて、このような風に理解しています。

  • 入社したからといって自己研鑽をやめてはいけない
  • 社内だけで価値がある人になってはいけない
  • 会社は人材市場で引っ張りだこになるような人を求めている
  • そのような人材が集まったときに会社はチームとして強い競争力を持つ

厳しい就職活動を乗り越えて、いったん入社してしまうと、その会社があたかも自分の「全世界」になってしまい、その中で何とかしようという意識が働くものです。自ら積極的に世界の技術トレンド、最新ビジネスモデルなどを吸収する姿勢がなくなってしまい、社内のルール(簡単に言うと出世)にとらわれてしまいがちです。Tさんはそれでは企業として競争力が弱まっていくと感じていたのでしょう。

余談ですが、先日某大企業でマネージャーを務める知人と会食する機会がありました。彼は今年の新人を一人「勉強を兼ねて」と連れてきました。会食では仕事の話を中心に話題も多岐にわたり大変充実していました。新人の方も最初は緊張していましたが、段々リラックスしてきたようでした。会食の終盤、僕の知人が新人の方に「でも、今日岩田さんと会食したことは、あまり社内で言わなくていいよ」と言いました。新人の方も、僕と同じ疑問を抱いたようで「どうしてですか?」と聞きました。僕の知人は「社外の人と会食したりすると、妬む人がいるからさ」と言いました。思わず耳を疑いました。その方はそのような環境でも積極的に外部と交流していくタイプでしたから、ご自身の経験を踏まえて新人の方へアドバイスされたのでしょう。皆さんはどう思われますか?僕はちょっと心配になりました。その会社が、というより、そのような雰囲気の会社や組織が日本にはたくさんあるのかな、と。

僕は若い方へ「常に転職を意識する」事を勧めています。誤解のないように補足しますが、僕が「転職をする」ことを勧めることは基本的にありません。転職を「意識する」ことです。そうすることによって、今の環境を客観的に見ることが出来るようになり、人によっては「今も意外と悪くないかも」と以前より愚痴が減ったり、前向きな気持ちになるんです。僕は「マーケットプライスを意識する」という表現より「転職を意識する」という方が分かりやすいかなと思っているので、そのような表現を使っています。上記の人事部長のTさんは入ってきたばかりの新人に対して「転職」というキーワードはもちろん使えませんから(笑)「マーケットプライス」という言葉を使ったのでしょう。今も僕の胸に深く刻み込まれているTさんの言葉。本当に真剣に会社の行く末を思い、そして新入社員への期待を込めてメッセージしてくれたと思います。感謝と尊敬の念を禁じえません。

「転職を意識する」だけで、本当にポジティブになれます。逆説的なようですが、不思議なもので現状の仕事も充実して気持ちも前向きになったりします。一度お試しを ^ ^