為本晃弘

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  • 年齢29歳

  • 出身地 千葉県

  • 結婚 独身

  • 海外経験なし

  • 職業 ITベンチャー企業勤務

  • 勤務地 東京都

  • 会社名ユカイ工学

  • 出身校 慶應義塾大学

  • 専攻 教養学部

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3 Points

大きい組織の体質に疑問を持ち、病院勤務を経てずっと興味のあったベンチャー企業に転職

得意のマンガや卓球メディアの愛あるコラムが認められた

病院の現場は、技師といえどもとっさの判断が求められる職場だった

インタビューの前に

為本さんには、すでに岩田さんが一度インタビューされています(吉本孝希さんとして掲載されています)。その際には放射線技師として病院勤務に至るまでの歩みをお話し頂きました。その後、病院を辞めてベンチャー企業に転職されたと伺い、その決断に背景などを中心に再度お話を聞くことにしました。

松野百合子

聞き手

松野百合子

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新卒で入った大手企業で感じた違和感からベンチャーに興味を持つ

新卒で誰もが名前を知る大企業に入社するが、外から見るイメージと実情とのギャップを感じた。その頃、ベンチャー企業の人々が自分の本音に従って生きる姿を見て興味を持った。それからはベンチャーの人々が集まる場所に出かけるように。

Q. 第一回のインタビューは、放射線技師として病院に勤務されているときに行われました。最近、病院を辞められて、ベンチャー企業に転職されたそうですね。前のインタビューで、最初に勤めた会社を辞めた際に、ベンチャー企業への就職を一度考えていらっしゃいました。そもそもベンチャーに興味をもったきっかけは何ですか?

きっかけは、社会人をやっていて疑問を感じる時があったことです。最近も東芝問題、神戸製鋼の問題など、大企業が隠し事をする体質が問題を引き起こすケースがありました。自分は誰でも知っている会社に新卒で入社したのですが、そんな大企業でも外からのイメージと内部で見る現状にギャップがあると感じました。そういうところで、何か違うな、と感じたんです。

その頃、フェイスブックを見ていると、ベンチャーをやっている人のコメントが流れてきました。とても若いのに自分の本音に従って生きている人がいるのを知って、カルチャーショックを受けました。自分は、会社に入ったら世の中のためになることを頑張ろうと思っていましたが、結局は嘘をつくようなことになってしまった。ベンチャーの人たちには打ち込むものがあり、自分自身に嘘をついていない感じがしました。もともと自分も突き詰めるものが欲しかったたんです。

それからは、ベンチャー企業が集まる場所に出かけるようになりました。スタートアップは面白そうだな、と感じました。博報堂を1年目でやめた人がやっていたシェアハウス「トーキョーよるヒルズ」のイベントに行ってみたりもしました。結局、最初に入った会社は2年目でやめました。(インタビュワー注:そのあたりは、前回のインタビューをご参照ください。)

Q. 前回のインタビューで、最初の会社を辞めた時にはベンチャー企業から内定までもらっていた、というお話しがありました。その時にはどんな就職活動をされたのでしょうか?

転職することになった時にベンチャーを探しましたが、自分の興味あることと近い仕事がいいと思っていました。僕はもともとマンガを書いていて、「漫画on Web」という誰でも無料でマンガ作品投稿できるサイトを使うこともありました。当時はまだ新しかったです。ある時、そのサイトを主催している漫画家、佐藤秀峰さんがBOOKSCANという企業を訪問される記事を目にしました。BOOKSCANは、紙書籍の電子データ化サービス、いわゆる自炊代行の会社です。この会社の代表は、何にでも自分自身でチャレンジする素晴らしい方で、とても惹かれました。そこで、マンガを送って応募したら、結構受けたようです。

Q. どんなマンガを送ったんですか?

BOOKSCANのビジネスモデルと自分なりの考察をイラスト入りのチャートなどにして、自己紹介や志望動機なども含め、全体で18ページの作品にしました。(インタビュワー注:応募作品をみせてもらいました。)2日間かけて仕上げました。

Q. すごい完成度ですね。これは、BOOKSCANへの転職に反対されたご両親にも見せましたか?これを見たら、為本さんの熱意と才能に動かされたのでは?

見せませんでした。見せたらよかったかな。でも、当時BOOKSCANが著作権の問題で訴えられていたことも両親が反対する理由の一つだったので(変わらなかったかもしれません)。その後、著作権の問題はクリアになっているんですけど。

結局、両親の意見には納得できませんでしたが、当時はすべてに疲れていたこともあり、専門学校に進み、放射線技師の資格を目指すことにしました。ベンチャーの中には医療系のサービスもありますし、専門スキルが活かせる会社に進む可能性も考えました。専門学校卒業の際には、資格を取った以上、技師を実際に経験した方が良いと言われ、最終的に病院に勤めることにしました。専門学校で一緒だった社会人の方の助言などもありました。

病院勤務時代

放射線技師として病院に勤務。技師といえども常にその場その場の判断が迫られる病院の現場に自分は向いていないように思った。自分なりに改善点を考えたが、とっさの時にパニックにならないようにする方法が見つからず、退職する決断をする。

Q 2年間勤務された後、病院を辞める決断をされます。どんな理由からですか。

結局ちょっと違った、というか、そもそも自分に現場は向いていなかったのではないかと思いました。自分は一つのことに集中すると他のことが見えないタイプですが、病院では常にその場その場の判断が迫られます。

技師の仕事ではCT、MRIなど色々な機械を、それぞれの患者さんに合わせて設定、操作していきます。全く同じ患者さんは一人もいません。事前に確認して準備していても、急変した場合など、様々な要素や状況にとっさに判断することが求められます。

当初、入職した時、1年間の間に様々な装置を実際に扱い、当直に入ることができるよう準備してきました。

しかし、同じ時期に入職した同期が1年後に実際に当直に入る事になり、私は結局入ることができずに終わりました。自分なりに何を改善していけば良いのか考えていたのですが、とっさの時にパニックにならないようにするにはどうすればいいか分かりません。

アナフィキラシーなどの緊急事態が発生した時に、適切な対応が取れるのか、最後まで自信を持つことが出来ませんでした。

Turning Point

ベンチャー企業へ転職

病院を辞めることを決めた頃、かつてから交流のあったロボットベンチャーのユカイ工学社長から連絡が。卓球のオンラインメディアに書いていた記事が目に留まり、同社に誘われる。ずっと惹かれていたベンチャー企業での活動をスタートさせる。

Q 病院を辞められて、今度は念願のベンチャー企業に就職されます。今回はどのようなご縁でしたか?

今度の会社はユカイ工学というロボットのベンチャーです。最初に知ったのは、2013年のApplicareという医療ITコンテストで代表の青木さんがハードウェアの紹介をされていた時です。

その後、コンテストに活かせないかなと思い、ユカイ工学が開発したkonashiというハードウェアを使ったワークショップに参加しました。コンテスト後も何度かお会いする機会がありましたが、しばらく連絡をとっていませんでした。次の就職先をちょうど探していたタイミングで、青木さんから5年ぶりにフェースブックでたまたま連絡があり、お会いすることに。ドンピシャのタイミングでびっくりしました。

注目してくれたのは、卓球の記事でした。僕は病院の仕事をしながら、Rallysという卓球のオンラインメディアに定期的に記事を書いていました。私自身、卓球が好きで大学まで続けていました。

その情熱を記事にぶつけていたのですが、青木さんから、「卓球に対する愛や、卓球をする人への愛を感じた」という言葉をいただき、それをロボットへも向けてほしいと言われました。

最近「シュー・ドッグ」というナイキ創業者の自伝が人気ですが、どんなものでも、それを大好きなコミュニティをいかに広げていくかが大事だと感じます。自分もその手伝いがしたいと思って、入社を決意しました。

ー 卓球がつないでくれた縁ですね。

中学から始めた卓球で、大学も卓球に打ち込むことができたし、卒業後も卓球つながりで飲みに行くことがあります。卓球部の先輩が、会社をやりつつ焼き鳥屋をやるから手伝いに行ったり。未来スケープ発起人の岩田さんとも卓球が大好きという共通項があります。

Q ご両親の反応は?

両親にはまだ言っていません。転職については、事後報告でいいか、と思っています。今は実家を出て一人暮らししています。両親には、僕が最初に入った会社での仕事についても理解してもらうことができませんでした。両親は医療関係者でしたので、自分たちの理解できる医療機関への就職を望んでいたのだと思います。

Q 為本さんの出身校である慶応大学は、日本の大学の中でも起業する人が多い印象がありますが、それでも周囲にベンチャーで働く人は少ないですか?

慶応では、特に体育会に入っている学生は大手企業に就職する人が多いです。体育会出身者で社会で活躍されているOBOGが沢山おり、大手企業の取締役、総理大臣、野球選手など幅広い分野に先輩方がおります。

卓球部は歴史ある部活だったので、そうした繋がりは強く、OBが練習を見に来たりしていました。起業に興味がある子も最終的に大手企業に就職し、現在では出世頭として活躍しています。

ー これからいよいよベンチャー企業でのお仕事ですね。才能と熱意を活かして活躍されますよう応援しています。