レポート: 未来スケープ発足の背景(7) 〜 安定とは

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安定とは?

これまで一義的に定義されてきた「安定」という観点では、今後不安定化していくでしょう。

ここでは一歩下がって考えてみます。そもそも安定という言葉を口にする時、私たちは何を頭に思い浮かべているでしょうか。それは「お金」ではないかと私は考えています。つまり「安定」とは定期的に入ってくるお金のことを意味しているのだと、まずは認識することが大事です。

幸福を求めるのではなく、幸福の一つの要因であるお金をゴールとして求めてしまうことはとても危険なことです。経産省が作成した下記の資料によると国民一人あたりのGDP増加が日本人の生活満足度の向上につながっていないことがわかります。

内閣府「国民経済計算」「国民生活選好度調査」より経済産業省作成(*ソース

お金と幸せの関連性についてはひとまず置き「安定=約束された収入」のことを考えてみます。

新卒一括採用や終身雇用が失われてくると仮定すると、いったい何が収入を約束してくれるのでしょう。それは自分がどの会社でも必要とされる人材となることではないでしょうか?それは会社に約束させる安定ではなく、自分自身で手に入れられる安定です。

さて、英語では「安定」を表す言葉が2種類あります。ひとつは Stability で、もう一つは Security です。

Stability とは「物事が落ち着いていて、激しい変動のないこと」であり、Securityは「財政的な安定」のことを意味します。上記の仮説に従うと我々日本人が人生や就職などで言う「安定」は多くの場合 Security(財政的な安定)を指していると思われます。

ところで近年、以前は予想すらしなかったような日本の大企業の経営不振に端を発する外資系企業による買収や、事業の切り売り、民事再生法の適用などのニュースをよく耳にするようになりました。そのような状況下において個人が考え得る選択肢は2つあります。1つは「より”安定”して雇用し続けてくれそうな企業を探し就職すること (Security)」そしてもう一つは「就職した会社がどのような状況になろうともいつでも他社に移れるプロになること (Stability)」です。私には後者の方が外的要因を受けにくい分、取るべき選択肢だと思えます。ただ私たちはその生き方に慣れていないのです。

安定という軸ではなく自分自身が「幸福になれそうか」「能力を発揮し社会に戻せるかどうか」という観点で物事を捉えることが大事で、その姿勢を身につけないといけません。そこに今の日本のチャレンジがあります。

未来スケープが考える「幸福」の尺度の1つに「自分がどれだけ自分の人生をコントロールできているか(主導権を持っているか)」ということがあります。急な転勤や単身赴任などに代表されるような企業の経営に左右されることは Security はあっても Stability ではないと考えることもできます。自分が社会に対して提供できる価値を意識するプロになる、という考え方が本質的な意味での安定 (Stability) になるということです。

Stability と Security。どちらの「安定」を求めていくべきなのか、若い人たち個人個人が、そして親が子どもの将来を見据える時によく考える必要があります。

(*)未来スケープ内関連コラム:「それって本当に安定?

 

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